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野本寛一著『神々の風景 信仰環境論の試み』

「神々の風景」は総じて変貌が著しい。それは衰微・荒廃してきているといって間違いない。その変貌と衰微は日本人の「神」の衰微であり、日本人の「心」の反映にほかならない。すべての環境問題の起点はここにある。自然のなかに神を見、その自然と謙虚に対座し、自然の恵みに感謝するという日本人の自然観・民俗モラルが揺らぎ、衰えてきているのである。かつて、われわれの先人たちは、折にふれて「聖性地形」のなかに身を置き、身と魂を洗い、汚れた心身を清め、魂の衰えを充たし、おのれを蘇生させてきた。そうした魂の原郷は、いかにしても次代に手渡してゆかなければならないと思う。(緒言 信仰環境論の視角より)

この本が出版されたのが1990年。それから四半世紀が経過し、日本だけでなく世界の「神々の風景」を破壊し続けているのが今の日本の現状とも言えます。しかし、経済を最重要とするこれまでの考え方から脱却して、古より受け継がれてきた自然観や民俗モラルをもう一度大切にしようという萌芽も現れてきています。その芽を殖やしていくためにも、先人たちが大切にしてきた「自然の中の聖地」を勉強するきっかけをこの本は提供してくれます。そして、実際にそれらの聖地に足を運び、心で直に観じるところから、本当に大事にしなくてはいけないものが見えてくるのかもしれません。