賤民にされた人びと、斜線の旅

その土地に伝わる言葉をしっかりと噛みしめると、日本人が数多の種族の混成であることが肌で感じられる。火山でできた島々に押し寄せる波のように、古代から多くの人びとがこの島を訪れ色を重ねていく。先に居た人々を悪に仕立てて追い払い同化させていくことを歴史というなら、教科書で教えられる歴史を「なぜ?」という視点から見れば、そのことがはっきりと見えてくる。単一と多様。生物の世界でどちらが持続的かは明確。多様な種族の混成より単一民族を「良い」と捉える風潮がもしあるならば、その種族を衰退させていくためなのかもしれない。融合していたものを分割し細分化し繋がりよりも差異を強調することで、世界的なビジネスは成り立ってきた。隣同士はいがみ合っているうちに、すべての「上がり」はどこかに吸い取られていく。だれも気がつかないうちに。立ち止まって自分の足から生えているであろう根を見つめる。その根が様々なものと繋がり合っていることを見つめる。そして上から吸い上げている掃除機の口を見つめる。その吸い上げる力よりも強く広く深く根を生やすために。


おすすめの本

『賤民にされた人びと : 非常民の民俗学』
柳田 国男(著) 河出書房新社

『斜線の旅』
管 啓次郎(著) インスクリプト

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