宇宙船地球号操縦マニュアル

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人類学者の方は、絶滅した種族について、知られているすべての事例史を調査していた。一方、生物学者の論文の方は、絶滅した生物種について、知られているすべての事例史を研究していた。つまりこのふたりの科学者は、絶滅の共通原因を追っていたのだ。それぞれに原因を見つけていたが、このときは偶然、論文が同じところに送られたものだから、この研究者たちが発見したそれぞれの原因というのが、実は同じものであることが判明した。どちらも、絶滅は過度の専門分化の結果であると、結論を出していたのだ。

人間から本質的な感覚を奪う、つまり生物や人類としての長い歴史の中で身に着けてきた知恵を麻痺させるためには、専門化が最も効率の良い方法と言えるかもしれない。一人では誰も思いつかないような破壊や、未来の生物や人類に大きな損害を与えてしまうような科学の悪用も、その作業に従事する人たちを専門化、細分化することで、人間の「良心」を踏み越えてその方向に動かしていくことができてしまう。

それぞれ本来的に異なった民族や人種から構成されているという作り話を、私たち自身も真に受けているという事実に気がつく。

極北の冬ごもりの状態なら皮膚は漂白され、赤道の衣服を全部脱ぎ捨てた状態なら、黒い色素形成の特徴が同種交配で強まっていく。すべてはユニークな地域環境条件と、過剰な同種交配の結果にすぎない。

民族や人種というレッテルの強調も、人間を「良心」とは異なる方向へと導くことができる。民族だけでなく宗教や、同じ宗教でも宗派に細分化することで、それぞれがそれぞれを排斥し、自らが安全なエリアを拡大することのみを行動の原理とさせてしまう。そのお互いを破壊する活動によって、その両方から、どこかの誰かが利益を得ていることなど、夢にも思わずに。

地球は太陽からのエネルギーを得て、自己増殖を繰り返す多様な生命を生み出し続けている。人間はその仕組みの一部を観察したり、再現したりすることはできても、システム全体を作り出すことはできないし、システム全体を把握することすらもできない。しかし、自分の行動がそのシステムに適っているかを知る機能を、実は人間は持っている。それは「良心」と言われる。

世界で対立する政治家たちやイデオロギー・ドグマの危険な袋小路が加速度的に増えつつある今、いったいどうやってこれを解決したらいいのか

それは、この本が書かれた時代でも、2020年の現在でも変わらない。ビジネスの種として次々に作り出される新しいドグマが人々を惑わし、細分化していく。しかし、目の前の自然、人、生物、風土と自分とを、一つ一つ再び結び付けてみることから始めては、と思う。そこに本来の繋がりが生まれ、そこに地球、いや宇宙全体の生命システムとの接続が生まれる。そして、その繋がりの先は自分の中の「良心」が間違いなく案内をしてくれる。

『宇宙船地球号操縦マニュアル』
バックミンスター・フラー (著) 芹沢 高志 (訳)

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